「創る」第15号
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日本遺産認定への道地域ブランディングに向けてしかし、産卵後の鮭を漁獲するアイヌの伝統的な漁法から、商品生産を前提とした海上での大量漁獲への変化の影響により、明治半ば以降、鮭は資源枯渇に見舞われます。このため、当時の漁業者は鮭資源の減少を補うため、ホッカイシマエビ、ホタテ、カニ、昆布など他の水産資源開発に取り組むとともに、漁の副業として畜産農業を営む者も現れました。後者は大正時代に移住してきた開拓者による酪農へとつながっていきます。こうした背景から、現在の根室地域を代表する多彩な一次産業の土台が築かれました。鮭漁に関しては、明治20年代から取り組まれてきた人工孵化事業の成果が昭和が回復し、鮭の生産地として再び全国に知られていきました。「日本遺産」は、文化財の活用を通じて地域の産業振興や観光振興、人材育成等と連動した一体的なまちづくりを推進するため、地域に点在する有形無形の文化財を結びつけるストーリーを「日本遺産」として認定する文化庁の事業で、平成27年度から実施されています。根室地域では平成29年以降、毎年申請を行ってきましたが、3度目の挑戦にしてついに令和2年6月、「“鮭の聖地」の物語”(申請:標津町、根室市、別海町、羅臼町)として日本遺産に認定されました。「鮭の聖地」の物語では、標津遺跡群など31項目の文化財がストーリーの構成要素として位置付けられています。根室地域では近年再び鮭の漁獲量が大きく減少し、地域経済に影を落としていることから、認定地域の自治体や観光関係者は、日本遺産認定を契機とした地域の活性化を図ろうとしています。令和2年7月には、日本遺産認定ストーリーをコンセプトに地域ブランディングと観光振興を進めるための協議会である、「鮭の聖地メナシネットワーク」(以下「協議会」)が設立されました。この協議会には、関係自治体のほか、観光協会、ガイド協会等が参画し、関連文化財の調査・保護、ストーリーの普及啓発、地域ブランディング促進などの取組を行うこととしています。協議会では、既にストーリーの普及啓発・広報のため、管内向け講演会を開催したほか、プロモーションツールとして、「鮭の聖地」ロゴマークを作成し、関係者への普及を図っています。また、令和2年度中にも、特設ウェブサイトやパンフレット、ポスターなどの広報媒体、ガイド向けの研修教材を製作するとともに、民間におけるストーリーの利活用を促進するため、観光関係者向けにはモデルルートの開発、食品製造事業者向けには商品販売などでの利用を念頭に置いた地場産品ストーリーを作成予定です。今回の日本遺産認定をきっかけとして、根室地域では、自治体と民間との協働による地域づくりの取組が動き始めており、それぞれのまちが共有する歴史的背景を踏まえた周遊観光の定着や、地元の食料品がストーリーを発信する広告となることで、この地域全体のブランド化につながり、発展していくことが期待されています。創る昆布干しの様子本記事の取組は、標津町ポー川史跡自然公園で担当しております。お問い合わせ先TEL:0153-82-3674E-mail:po-gawa@shibetsutown.jp▲今回お話を伺った日本遺産認定の担当標津町ポー川史跡自然公園小野園長野付湾の打瀬網漁(ホッカイシマエビ漁)の様子▲西別鮭寒風干しの様子▲現在の漁業の様子1240年代になって現れはじめ、鮭の漁獲量

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